長井 鞠子
サイマル・インターナショナル顧問・専属通訳者
時代の波頭に立てるのが通訳者の醍醐味。
「人に伝えたい」という強い思いをもって訳してほしい。
会議通訳者が必要とされるイベントというのは、その時に一番話題になっていること=その時代で重要な場面だと思います。この仕事の醍醐味は、そういった場に自分が立てるということ。「今、時代の波頭に立っているんだ」という実感が私の大きなやりがいです。
通訳者にとって英語・日本語の高い言語能力は最低限の条件ですが、通訳者をめざす方には特に"話し言葉"に対して常にアンテナを張っていてほしいですね。聞き流すのではなく、「どんな意味だろう?」「どうやって訳すんだろう?」と興味をもつことです。流行語など、面白い言い方もあります。自分のアンテナに引っかかったものはしっかり取り込むようにしてください。表現力を磨くなら、英語・日本語に関わらずとにかく読んで、人の話す言葉をたくさん耳にすることです。
私はよく本を読みますが、どんなトピックでもどこかで通訳に活きていると思います。そして自分が気に入った表現があったら、とにかく使ってみてください。実際に声帯を震わせないと身につきません。そして想像力も大切です。私は好奇心旺盛で、例えば一枚の絵を見ても作者や構図などさまざまに想像をめぐらせます。自分がもっている知識・想像力を駆使することで、表現が豊かになると思います。
通訳者にとって必要なのは語学力・表現力だけではありません。言葉だけでなく、世の中すべてに対する好奇心。黒子であっても、私の話を聞いて!という気持ちで、新しい単語・素敵な表現をどんどん披露しようとする姿勢。そして、「人に対する重み」を感じられる人であってほしい。言葉を訳すからには、その背景には発言した人がいます。人に対して興味をもち、その思いを感じなければおざなりな通訳になってしまいます。これらが総合的に作用すれば、良い通訳者になれると思います。
この仕事は伝える職業ですから、伝えたいというパッションが一番大切です。通訳者をめざす方には、「私が伝えるんだ!」という強い思いを忘れずに取り組んでほしいですね。