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修了生メッセージ

翻訳者を目指されたきっかけを教えてください。

まずは、世界中の人々の交流に役立ちたいと思ったからです。きっかけはインターネットで落語の動画を見たときに、字幕のおかげで面白さが理解できたことでした。今は仕事で製品の使い方や注意事項などの翻訳をしていますが、お客様から「お気に入りの商品が見つかった」と返事が来ると、小さな役割を果たせたと喜びを感じます。

また、翻訳のプロセスで新しい知識を得るのが楽しいからです。もともと勉強が好きで、あまり知られていないようなことでも知りたいと思っています。たとえば、中国と日本の抗菌性評価実験はどう違うか、家具にAIを利用する中小企業のことなど。こんなに面白いことを勉強できて、しかもお金がもらえるなんて、翻訳はいい仕事だなと思います。

サイマル・アカデミーに入学された理由を教えてください。

理由の一つは、大学の先生が塚本先生の話をするときに、サイマル・アカデミーで中国語コースを教えていたと言っていたのが印象に残ったからです。来日後は経営学部に編入し、翻訳を専門的に勉強する機会がなかったため、サイマルに行こうと決意しました。ホームページを見ると、コースが充実していることや、レベルを判定する入学試験があること、講師は現場で活躍しているプロの方が担当していると知り、他の学校は調べずサイマルに決めました。

授業を通して、どのような力が身についたと思われますか?

リサーチ力、細かいところに気をつける力、読み手の立場に立つ力です。リサーチ力については、先生が紹介してくれた、ご自身も使っているウェブサイトが参考になりました。また、授業でクラスメイトのプレゼンテーションを聞いて、さまざまな分野の関連サイトも知ることができました。

細かいところに気をつける力については、最初の授業でフォントや書式などを先生に指摘されたことで意識するようになりました。自分ではなかなか気づけませんでしたが、質の高い翻訳文を作るためには、細かいところへの配慮も重要だと学びました。

読み手の立場に立つ力については、はじめは原文の独特な表現をどう訳すかに気を取られて、読み手の気持ちを考えられていませんでした。先生の訳文を読むと、文の構造を変えたり、リサーチを行なって他の言葉で言い換えたりしながらフレキシブルに読みやすく処理していたため、とても勉強になりました。

辛さんは通訳者養成コースも並行して受講されていましたが、翻訳の学習との相乗効果はありましたか?

ありました。翻訳の授業を通して、複雑な文を処理する能力を高められたことが、通訳にもとても役に立ったと思います。通訳では長くて複雑な文をじっくりと考える時間がないため、瞬時に言葉が出てこないときがありますが、翻訳の学習で複雑な文にも慣れていれば、比較的早く質の高い訳出ができると思います。

逆に、通訳の授業を通して、原文に引きずられないことを常に意識するようにもなりました。私は翻訳の時に一字一句をターゲット言語に変更するようになりがちでした。通訳の授業でも一つの言葉に引っかかって無言になったこともありますが、「全体の意味をつかんで自然に訳そう」と先生から助言をいただいたことで、翻訳でも訳しにくい言葉を自然に処理できるようになりました。

アカデミーの課題の他、翻訳のスキルアップのために行っていたことはありますか?

日常生活でも単語の訳を考えることです。普段は日本語を使うことが多いため、例えば「『炊飯器』は中国語では……」などと考える癖をつけています。中国語の新しい言葉も、「人民中国」などのウェブサイトでどのように訳しているのかを確認します。

また、中国語と日本語を混ぜて使わないようにすることです。例えば、「你看到刚才的ニュース了吗」ではなく「你看到刚才的新闻了吗」と言うようにします。周りに日本語がわかる友人も多いですが、中国語と日本語を切り替えるためにあえてそうしています。ほかには、たまに「ビリビリ」などの動画サイトで日本語の動画に字幕をつけたりもしています。

今後の目標を教えてください。

今は翻訳の実績を積むために、なんでもやってみたいです。できれば自分が好きなお笑いや音楽関連の仕事もしてみたいです。自分で訳した本を一冊世に残すのもかっこいいと思います。

また、今後は機械に代替されない翻訳者になりたいです。AIなどの技術が急速に発展している中、翻訳への応用も増えてきています。翻訳ソフトで長い文章や若者言葉を入力しても、おおむね正しい訳が出てくるようになりました。通訳・翻訳の効率が上がり、かえって便利になったところもあるでしょうが、機械には言外の意味を理解し、お客様の要望に応えることまではできません。それができる翻訳者を目指して、頑張りたいと思います。

辛ムショウさん

サイマル・インターナショナル登録翻訳者

中国の大学で日本語学科に入学。交換留学を機に、日本の大学で経営学部に編入する。卒業後は日本の化学メーカーに就職。現在は貿易職に務め、貿易文書などを翻訳している。2019年10月より翻訳者養成コースの受講を開始し、2020年9月に修了。好きなものはお笑いで、中国の「相声」やアメリカのスタンダップコメディ、日本の漫才と落語など。