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修了生メッセージ

映画会社に勤務する傍ら通学をスタート

大学の英語学科を出て映画会社に就職し、約10年間、洋画の配給の仕事などを手がけていました。もともと映画が好きで、とてもやりがいのある仕事だったのですが、自分には専門的な業務を突き詰めて行う「職人気質」なところがあり、一社員として組織の中で業務をこなしていくことに、違和感を感じるようになりました。

映画祭や記者会見などで活躍する通訳者の仕事には以前から興味があり、通訳が自分にできるものかどうか、ひとまず通訳者養成学校に通ってみることにしました。サイマル・アカデミーは長い歴史と実績があり、ここを出た通訳者はレベルが高いことで知られていたので、迷わずサイマルを選び、仕事帰りや週末を利用して通い始めました。

英語で業務をこなしていたこともあり、英語には自信があるつもりだったのですが、通訳の勉強を始めてみて、自分の言いたいことを話すのと、通訳者として人の言葉を代弁するのとでは、まったく異なることに気付かされました。通訳者にとって最も大事なのは予習であること、話し手を理解し、その人が考えていることを読み取れるようになる必要があることなど、プロとして仕事をしていく上で欠かせない心構えを学びました。単語テスト、時事クイズ、通訳演習などに備え、授業がない日でもオフィス近くのカフェで終電まで勉強していたこともありました。

クライアントの信頼を得て 記者会見やインタビューを通訳

サイマルを約3年で修了するといったん会社を辞め、最初の1年は週3回働く契約社員の仕事をしつつ、次第にフリーの通訳者としての仕事を増やしていきました。映画会社勤務時代に知り合った方々から声をかけていただき、海外の俳優や監督が来日したときの記者会見、インタビュー、映画祭での通訳の仕事などがコンスタントに入るようになりました。定期的に仕事を得られるようになるには、クライアントとの信頼関係が大切。「この人になら安心して任せられる」と思ってもらえるよう、一つ一つの仕事を丹念にこなしてきました。フリーになって約10年、今もこの仕事を続けられるのは、その信頼関係と安心感を大切にしてきたからではないかと思います。

ハリウッド・スターなど世界的に名が知られている方々と接して感じたのは、長年成功を続けている方は、その仕事ぶりがきちんとしているということ。現場でお会いしたブラッド・ピットは、周りへのねぎらいを欠かしません。通訳を担当したキアヌ・リーブスは、時間に遅れてくるなどということがまずありません。

巨匠、大物と呼ばれる方々を相手にする中で、ひどく緊張してしまうこともあります。特に映画『沈黙ーサイレンスー』のプロモーションのため来日したマーティン・スコセッシ監督の通訳を担当した際には、自分が監督の大ファンということもあり、「失敗は決して許されない」と、大変なプレッシャーを感じました。そんなとき、私を助けてくれたのはやはり「予習」です。監督の作品はすべて見て、原作とその関連書籍を読み、過去のインタビュー記事や動画もチェック。「私は通訳者としてやるべきことをすべてこなしている」という自信を得て、当日は平常心で臨むことができました。

クラスメートはよき仲間でありライバル

サイマルで学んでいたときの先生に声をかけていただき、今はサイマル・アカデミー「準備コース」「通訳者養成コース」の講師も務めています。受講生は英語の基礎力のある方が多いのですが、流暢に話せても文法が崩れていたり、表現の幅が足りなかったり、知識不足から話を深く理解できていなかったりと、独学では気付きにくい点を指導するようにしています。

私自身がそうでしたが、同じように通訳者を目指す人たちと勉強することで、大変良い刺激が得られます。私は当時のクラスメートとは、修了後もいい付き合いが続いています。ぜひスクールで、自分にとってのよき仲間、よきライバルを見つけてください。

「The Japan Times for WOMEN -SPRING 2018」(The Japan Times)より転載

今井さんの受講コース

通訳Ⅱ→通訳Ⅲ→通訳Ⅳ→会議通訳Ⅰ→会議通訳Ⅱ

今井美穂子さん

会議通訳者/サイマル・アカデミー講師

上智大学外国語学部英語科卒。映画配給会社に勤務しながら、3年間サイマル・アカデミーの通訳者養成コースに通う。現在はエンターテイメント業界を中心にフリーランスの通訳者として活躍する一方、通訳者養成コースの講師として後進の指導にあたる。