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授業レポート

タイトル

2022年9月11日にオンラインで行われた、JCI通訳セミナーの様子をお届けします。

JCIとはJoint Commission Internationalのことで、医療施設の「医療の質の向上」と「患者安全」を国際基準で評価するアメリカの第三者機関です。講師を努めるのは、20の病院でJCIサーベイの通訳案件を経験している駒井雅子さん。

JCI通訳について

今回のセミナーではJCI案件の経験が無い方も多数いらっしゃるため、JCIの概要から説明していきます。
通訳者が手配されるのは認定プロセスの過程で行われるサーベイ。一度認定されたら終わりではなく、3年ごとに更新審査があるため、病院側も継続的な安全と医療の質の向上を目指します。

セミナー中何度も言及されていたのは、Standards、Process Guideと呼ばれるマニュアルの内容をしっかり理解しておくこと。サーベイでは370ページを超えるStandardsに掲載されている12の分野、1200以上の審査項目をチェックしていくことになります。
これに加え、病院や担当となる診療科についての下調べも必要になります。準備に必要な資料は膨大な量のため、Standardsの内容を頭に入れるまではなかなか大変です。

サーベイでの通訳は逐次が基本です。規模が大きな病院の場合、大きな会場で何百人の目の前で逐次通訳を行うという緊張する場面も少なくありません。
また、コロナ禍になってからはオンライン、ハイブリッドでサーベイを行うことも増えています。音声が安定しなかったり、いろいろな音が響いてしまい聞き取りに苦労することもあるそう。そんな中、パートナー通訳者と助け合うことがより一層重要になったといいます。

次に、実際のサーベイの流れを1日目から順を追って説明していきます。模擬サーベイでは、サーベイヤーから頻出の質問や、それらがどの項目と関連しているのかを解説します。医師や看護師だけでなく、病院内にいるすべての方がサーベイの対象となります。例えば売店の店員や清掃員がサーベイヤーから質問を受けるなど、緊張感がある中で通訳をすることも多々あります。
サーベイヤーからの質問の意図を正しく理解し、回答のサポートをするためにもやはりStandardsの内容理解は必須といえます。

最後に、ウェビナー上での質問機能を使用したQ&Aセッションです。
「JCI認証を取得するメリットは?」「地域によって意識の差はあるの?」「ハイブリッドのJCIサーベイ通訳の詳しい様子をもっと知りたい」などなど、時間内にすべての質問にお答えできないほどたくさんのご質問をいただきました。

JCIは特殊な用語が多く、どなたでもチャレンジしやすい案件とは言えないかもしれません。いきなりJCIサーベイから始めようとするのではなく、例えば医薬系の社内会議などで経験を積みながら用語を覚えていく、という道も選択肢のひとつでしょう。

病院側はJCI認証取得のために莫大な投資をし、何年も何か月も前から準備して体制を整える必要があります。認証にかける熱意を感じるにつけ通訳者としてもぜひ認証取得に至ってほしいと思うといいます。

サーベイヤーがよく言う”JCI Journey”という言葉。JCI認証を受けると決めた時から始まる、患者安全と医療の質の改善を求め続ける終わらない旅路。その旅路に携わることができる、非常にやりがいのある通訳ではないでしょうか。

模擬サーベイ

受講者の声

  • 講義内容もさることながら、先生から通訳者の心構えなど、大変重要な姿勢を学べたと思います。
  • 細かいところまでご説明されていて、特に未経験の方に対しての示唆が深かったと思います。
  • 実際に現場を経験されていらっしゃる通訳者のお話しを聞かせていただいて勉強になりました。特に、こういったお仕事の入り口としてどういうことをすべきかという点が参考になりました。
  • Standardsや当日のスケジュールに関するお話もあり、実際の案件のイメージが湧き、大変勉強になりました。
  • 大変網羅的、かつ的確なご説明で、知識や心構えの整理が出来ました。また、先生の落ち着いた話し方も勉強になりました。
  • 概要を知ることができ、挑戦するために何から始めたらよいのかが理解できたのがよかったです。質疑応答を通して雰囲気もわかりました。